賃金計算の端数処理の取扱い~30分未満は切り捨てOK?~
目次
労働時間の合計の端数って切り捨ててもいいの?
・勤務先では朝9時始業の15分前には出社して制服に着替えて掃除をすることになっているんだけど、労働時間は9時からしかカウントされない。でもこれってどこの会社も同じだよね…
・うちの会社はタイムカードが無くて手書き。記入はきっかりの時間でしか書くのが許されてない…17時25分に終わったとしても、記入できるのは17時まで。
…などなど、皆さんも働きながら労働時間について疑問に思ったことはありませんか?
そもそも労働時間って会社が自由に決めていいの?
法律で決められている労働時間
➡ 原則として1日に8時間・1週間に40時間(休憩時間は除く)
➡ 労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩が必要
➡ 少なくとも毎週1日の休日か4週間を通じて4日以上の休日が必要
参考 ➡ 労働時間について(厚生労働省HP)
労働時間・残業時間の端数処理について
➡ 労働時間は1分でも労働の対価となりますので、端数の切り捨て処理は認められていません。
1分単位で計算して支給しなければなりません。
ただし、「1か月における時間外労働、休日労働、深夜業の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げること」については、労働基準法違反として取り扱わない)という通達が出ています。(昭和63.3.4基発第150号)
この赤枠で囲んだ部分の解釈は、あくまでも「時間外労働」部分、1日8時間を超える残業(法定外残業と言います)時間についてだけです。いわゆる25%増しになる部分です。
8時間未満の法廷内残業の部分には当てはまりませんので注意が必要です。
➡ 例えば1日4時間のパート労働者の場合、1カ月の労働時間の合計が60時間25分となった場合には
25分部分をカットする事は出来ません。きっちり支払う必要があります。
この端数処理は、必ず「30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げる」ことがセットになります!
ある月は29分を切り捨てるけれど、ある月は30分を1時間として取り扱う、という「不利な時もあるけど有利な時もあるよ」という残業を計算するときの簡便性を認めただけの通達なのです!
➡ では、冒頭の「15分前に出社して着替えたり掃除する時間」はどうなるのでしょうか。
そうです。これも労働時間になります。
この「始業までの時間」や「休憩時間のちょっとした雑務」が労働時間になるのかどうかは、「使用者の監督下にあるのか、使用者の指示によるものなのか否か」で判断されます。裁判例が多くありますので、詳細に知りたい方はお調べ下さい。
もしも違法のまま切り捨てを続けていたら・・・?
もしも1日8時間未満のパート労働者の30分未満の切り捨てを続けていた場合、
月に20分×2年(賃金は2年分までさかもぼって請求出来ます)=480分(8時間)×時給1000円なら8000円。
100人のパートさんを抱えていたら80万にもなってしまいます。
正社員へのサービス残業などもそうですが、後々監督署の是正勧告などが入ってから不払い賃金を支払うのは事業所規模によっては大変な額となってしまうのです。
労働時間が容易に把握できる人数の事業所の場合には、きちんと時間から時間まで分単位で計算するのが法律違反にならないベストな方法ではないでしょうか。。。
労働基準法違反による公表事案
最後に、参考までに厚生労働省HPの労働基準法違反による公表事案を載せておきます。
労働基準監督官は会社に対して監督指導する「行政監督権限」と、
取り調べや逮捕・差し押さえが出来る「特別司法警察職員」という2つの権限を持っています。
悪質な場合には賃金不払いでも送検される可能性もありますので、ご注意下さい。
労働基準法違反による公表事案 ➡ 厚生労働省HP